あまりに美しくも残酷な浅田文学〜「憑神」。

「憑神」浅田次郎氏著
浅田次郎氏の初期の頃の作品「憑神」を久しぶりに再読しました。
「プリズンホテル」の世俗的な現代ファンタジー任侠世界とはかけ離れ。物語の舞台は幕末。
しかも主人公は、才能だけはあり過ぎるのに、どうしようもなく不遇な次男坊です。
正気で生きていけない彼が酔った勢い(私の様だ)でまさか拝んだ神さんがまたよりにもよって、とんでもなく酷い神だった。酷い。(どうなのかしら?うーん?)――
てなストーリ。
正直、読んでいて何度も思います。
「これ、救いあるのか?」と。
でも、この救われなさこそが、
浅田次郎氏の初期作品の美しさであり、残酷さなんですよね。
才能があっても報われない時代
「憑神」が描いているのは、
努力や才能ではどうにもならない時代の理不尽さです。
幕末という、価値観が壊れかけた時代。
正しさも、身分も、未来も、
一晩でひっくり返ってしまう。
主人公は決して怠け者ではありません。
むしろ、真面目で、頭も切れる。
それでも「次男坊」で「家格が低い」というだけで、
人生の選択肢がほとんど残されていない。
このどうしようもなさが、
読んでいて胸に刺さります。
映画『憑神』について
『憑神』は、妻夫木聡さん主演で映画化もされています。
原作の持つ空気感――
軽やかさと絶望が同居する不思議なバランスを、
映像として丁寧に表現した作品だと思います。
なぜ今、『憑神』なのか
派手な成功も、分かりやすい救いもない。
それでも「生きてしまう」人間のお話。
『プリズンホテル』のような痛快さとは真逆ですが、
だからこそ、今読み返す意味がある物語だと感じました。
ぜひ、まだ読んだことがない方にも、
一度手に取ってほしい一冊です。
浅田次郎氏について
浅田次郎(あさだ じろう)
1951年生まれ。
『鉄道員(ぽっぽや)』『プリズンホテル』『壬生義士伝』など、
人情と時代の狭間を描く名作を数多く世に送り出してきた作家です。
https://kodanshabunko.com/asadajirou/index.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%85%E7%94%B0%E6%AC%A1%E9%83%8E
この記事の著者
花菜(hana)/井上 宏
大阪市中央区・船場エリアで50年以上続く花屋「花菜(hana)」の代表。
1級フラワー装飾技能士として、開店祝い・法人向け花ギフト・
日常の花贈りまで幅広く手がけています。
